この記事でわかること

  • 病院・クリニックは女性の従業員比率が高い職場である
  • 女性特有のライフイベント(結婚、妊娠・出産、子育て)に的確に対応する必要がある
  • 妊娠・出産と子育てについて、院長が必要な法的対応がある
  • 妊娠・出産と子育てを理由として、従業員に不利益な扱いをすることは許されない

女性のライフイベントと医院経営

病院やクリニックは女性の比率が高い職場である

医療業界は、圧倒的に女性従業員が多い職場です。

看護師はもちろんのこと、看護助手や医療事務、介護士なども、圧倒的に女性の割合が多いです。

実際に、産業別雇用者数の統計から見ても女性の就業者が最も多い職場は医療・福祉系であり、2020年現在で就業している女性(2968万人)のうち21.9%が医療・福祉系の職場で働いています*1。

女性が多いということは、女性特有のライフイベント(結婚、出産、子育て)の発生も他業種に比べて格段に多いということになります。結婚・出産・子育ては女性にとっては非常に嬉しいことである反面、仕事との両立が難しく、ともすれば離職につながりかねないイベントです。

経営者としては、まずは法的な対応を確実に行うことで、安心して働ける職場環境を提供し、離職を防止することが大切です。

妊娠・出産・子育てをする従業員に対し不利益な扱いをしてはならない

女性特有のライフイベント(結婚、出産、子育て)を迎える従業員がいる職場の経営者として、

妊娠・出産・子育てを理由とした不利益な取り扱い(解雇、減給、降格など)は許されません。
「妊娠したから解雇」「育休を取ったから降格」という扱いは違法になりますのでご注意ください。

また最近では、妊娠・出産・子育てをする従業員に対するハラスメントも問題となっています。

「就職したばかりなのに妊娠なんて」「健診なんて休みの日に行くものでしょう」などといった、気軽に発した言葉もハラスメントとなり得ます。
無益なハラスメントを防ぐためには、妊娠・出産した従業員への対応はもちろん、それによって業務負担が増える可能性のある他の従業員へのケアも必要となります。

妊娠・出産についての法的対応

従業員が妊娠および出産をする際の対応は、労働基準法をはじめ、男女雇用機会均等法などに規定があります。ここでは代表的なものについて簡単に解説します。

✔妊娠初期

保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保(男女雇用機会均等法)
※医師又は助産師(以下「医師等」といいます。)がこれと異なる指示をしたときはその指示に従う。

○ 産後(出産後1年以内)
医師等の指示に従って必要な時間を確保する

男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置

■保健指導又は健康診査を受けるための時間の確保(法第12条)

事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません。

健康診査等を受診するために確保しなければならない回数

〇妊娠中

・妊娠23週までは4週間に1回
・妊娠24週から35週までは2週間に1回
・妊娠36週以後出産までは1週間に1回

〇産後(出産後1年以内)

医師等の指示に従って必要な時間を確保する

働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

✔妊娠中

〇従業員が医師の指導事項を守ることができるようにするための措置(男女雇用機会均等法)
〇妊婦の軽易業務転換
〇妊産婦などの危険有害業務制限
〇変形労働時間制の適用制限、
〇時間外労働・休日労働・深夜業の制限(労働基準法)

男女雇用機会均等法における母性健康管理の措置

指導事項を守ることができるようにするための措置(法第13条)
妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その女性労働者が受けた指導を守ることができるようにするために、事業主は勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません。

働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

✔産前・産後

産前・産後休業については労働基準法に定められています。
基本的には産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間は就業させてはいけません。
ただし産後6週間を経過し本人から請求があり、医師が支障ないと認めた場合は早期の復職が可能です。
解雇制限についても同じく労働基準法に規定があり、産前・産後休業中、またその後30日間は、解雇は禁止されています。

労働基準法 第六章の二

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
第六十六条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。
 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

e-gov 法令検索 労働基準法

労働基準法 第二章

第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

e-gov 法令検索 労働基準法

子育てについての法的対応

当然ですが、子どもは産んだらお終いというわけにはいきません。
ある程度の年齢になるまでは、子育てにかなりの時間を割く必要があります。育児中の女性従業員についても、法律は手厚い保護を求めています。

✔1歳まで(事情によっては2歳まで)

子どもが1歳に達するまでの間に従業員から請求があれば、雇用者は育児休業を与えなければなりません。
育児休業については育児・介護休業法に細かい規定があります。
育児休業は、正職員はもちろんのこと、一定の条件を満たした有機契約労働者も対象となります。また、保育園に入所できない場合など、条件を満たせば1歳6ヶ月(最長で2歳)まで育児休業を認める必要があります。

✔3歳まで

育児・介護休業法には、3歳に満たない子どもを養育する親に対し短時間勤務、所定外労働の制限などの規定があります。
従業員からの請求があれば、1日の所定労働時間を原則として6時間とする必要があります。また、こちらも従業員からの請求によりますが、所定外労働が制限されます。

✔小学校就学前

育児・介護休業法には、小学校就学前の子どもを養育する労働者に対し、子の看護休暇、時間外労働・深夜業の制限の定めがあります。
従業員から請求があれば、年次有給休暇の他に子一人につき年5日の看護休暇を与える必要があります。看護休暇は予防接種や健康診断を受けさせるときにも使えるものです。

また努力義務ではありますが、育児目的休暇制度(配偶者出産休暇や入園式等の行事参加のための休暇等)を設けることを検討しなければなりません。

まとめ

以上、女性のライフイベントと医院経営について、知っておきたい法的知識を簡単にまとめました。

女性の多い職場だからこそ、女性に対し手厚く対応することで、対応について不安に思うことがありましたら、ぜひ一度専門家である社会保険労務士にご相談ください。


参考:

妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ 母性健康管理に対する企業の義務

https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/gimu/

厚生労働省 職場における セクシュアルハラスメント対策や 妊娠・ 出産・ 育児休業・ 介護休業等に 関するハラスメント対策は 事業主の義務です!!

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000378144.pdf