この記事でわかること

  • 根拠があれば支払いの義務が発生
  • 放置せずに早めに対応するべき
  • サービス残業などを行わせない適切な労務管理が必要

退職後の未払い残業代請求

「退職した従業員から、未払い残業代の請求があったけど、支払わなければならないのか?」というご相談が近年増えています。結論から言うと、未払いの残業代があると言う証拠がきちんとあれば、支払う必要があります。

今回は、そもそも「未払い残業代」とは何を指すのか、支払う根拠、残業代の証拠となるもの、残業代の時効など、未払い残業代における問題点と気をつけたいポイントについて詳しく解説いたします。

未払いの根拠があれば支払いの義務がある

請求された内容が正当であり、残業代が未払いであるという確かな証拠があれば、雇用主は退職後でも未払い残業代を支払わなくてはなりません(労働基準法第32・36・37条)。残業代を支払わない場合は、法律により「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課されます(労働基準法第119条)。

さらに、退職までに支払われなかった残業代は未払い賃金と同様の扱いとなるため、年14.6%の遅延損害金(遅延利息)がかかります1

未払い残業代請求の証拠として認められるもの

未払い残業代請求の証拠として認められるものには、大きく分けて①会社に保管されているものと、②従業員が個人で持っているものの2つに分けられます。以下に証拠となる主なものをいくつかあげておきます。

会社に保管されてあるもの

・タイムカード
・勤怠記録
・業務日報
・社員証(IDカード)の入退館記録
・会社のPCに残っているログイン記録・業務上のメール

従業員本人が保管しているもの

・手帳などの記載
・上司からの指示書やメモなどの走り書き
・交通ICカードの履歴

未払い残業代の請求を受けたら確認したいチェックポイント

未払い残業代を請求されたからといって、元従業員の言うとおりの額を全て支払う必要があるとは限りません。請求があった場合は、以下の点に注意して請求内容を確認しましょう。

退職後の残業代請求の時効は3年間である

2020年4月の民法改正により、未払い残業代請求の時効が2年から5年(ただし当面の間は3年)に延長されました。それに伴い、賃金台帳を含めた記録の保管期間も5年(ただし当面の間は3年)に延長されていますので、必要な書類を誤って破棄しないよう注意が必要です。

詳しくは、厚生労働省から発表されている以下の内容をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdf

サービス残業などを行わせない適切な労務管理が必要

退職した従業員から未払い残業代の請求を受けた場合は、そもそも支払う必要があるかどうかの精査を行う必要があります。場合によっては弁護士や労働基準監督署などが介入する可能性もあり、心身ともに疲弊することになります。このようなことを避けるためには、そもそもサービス残業などを行わせない、労働時間をきちんと明示するなどといった、適切で透明性のある労務管理が必要です。

まとめ

退職した従業員から未払い残業代の請求があった場合、未払いである具体的な根拠があれば、雇用者は残業代を支払う義務があります。放置すると遅延損害金が加わり支払い総額が多くなるだけではなく、相手方との関係性が悪化し、労働基準監督局や弁護士が介入する可能性もあるため早めに対応するべき事案です。
請求通りに支払う必要があるかどうかも含め、ぜひ一度、専門家へご相談ください。

参考:1 厚生労働省東京労働局 未払い賃金とは