この記事でわかること

  • 社会保険料を決める標準報酬月額を決定するタイミングは3つある
  • 給与が年の途中で大きく上下すると、随時改定を行い、社会保険料の額を調整する必要がある
  • 固定的賃金の上下と給与総額の上下が逆方向である場合は、随時改定の対象外

従業員の賃金が変わったときに行う社会保険料の手続き

社会保険の随時改定とは?

健康保険と厚生年金保険に加入している従業員は、毎月の給与から社会保険料が控除されます。この社会保険料の額は、給与に応じて決まります。

給与の総額を保険料額表に当てはめて標準報酬月額を決定し、その等級に応じた保険料が控除されます。

保険料表は全国健康保険協会のWEBサイトにて確認ができます。実際に見たことがない方はこちらを見ていただくとイメージが湧きやすいでしょう。

参考資料:全国健康保険協会 令和3年度保険料額表 被保険者の方の健康保険料額_大阪(令和3年3月~)

標準報酬月額を決定するタイミング

標準報酬月額を決定するタイミングは主に3つあります。

①資格取得時の決定

入社時に社会保険に加入する手続きを行いますが、その時に標準報酬月額が決まります。

まだ最初の給与を支払う前ですが、基本給や通勤手当から1か月の給与の見込み額を想定し、保険料額表に当てはめます。

②定時決定

毎年4月から6月までの給与の平均額から標準報酬月額を計算し、7月に算定基礎届を提出します。

算定基礎届とは、毎年一回標準報酬月額の見直しをし、届出する書類のことです。

これにより、社会保険料はその時点での給与に見合った金額になるよう調整されます。基本的には、年に一回の定時決定により、社会保険料が給与総額と比較して多すぎたり少なすぎたりしないよう毎年調整されています。

上記の2つは、時期が決まっています。

ですが、給与が年の途中で大きく上下することがあります。その場合、算定基礎届の提出を待つことなく標準報酬月額を変更し、社会保険料の額を給与に合わせて上下する必要があります。

それが、3つ目の随時改定です。

随時改定の手続きが必要となる場合

随時改定の手続きが必要となるには、幾つかの条件があります。

①固定賃金に変動があること

これには、基本給の昇給や降給が該当します。月給か日給か時間給かを問いません。

また、諸手当の変更も固定的賃金の変動に該当します。引っ越して通勤手当が変更されたり、資格を取得して資格手当が追加されたり、家族が増えて家族手当が支給されるようになったりするかもしれません。

このように、固定的賃金に変動があることが条件となります。

②標準報酬月額を比較し、2等級以上の差が生じていること

固定的賃金が変動して3カ月間に支給された給与総額の平均を計算し、それに応じた標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額とを比較します。

これにより、2等級以上の差が生じていることが条件となります。

なお、この時の給与総額には、残業手当などの非固定的賃金も含めて計算します。

定時決定はそれまでの標準報酬月額の等級とは関係なくその時点での給与総額に応じた標準報酬月額に変更されますが、随時改定はあくまでも2等級以上の差が生じるのでなければ行われません。

さらに、固定的賃金が変動して3カ月とも、支払基礎日数(給与計算の対象となる労働日数)

が17日以上であることが条件です。医院が特定適用事業所に該当し、そこに勤務する短時間労働者として社会保険に加入している従業員は、11日以上であることが条件となります。

随時改定が行われない場合

では、給与の総額が大きく上下したにも関わらず、随時改定されないのはどのような場合でしょうか。

これは、上記の条件の逆となります。

・固定的賃金に変動がない場合

たとえば、急に業務が忙しくなり残業手当が大幅に増えることがあります。逆に時間外労働が減って、残業手当が少なくなることもあるでしょう。

この場合、たとえ給与総額が変化しても、その原因が非固定的賃金であることから、随時改定の対象外となります。なお、定時決定の場合にはこの条件はありませんので、一年前から固定的賃金が変動していなくても、残業手当によって給与総額が上下して標準報酬月額が変更される場合があります。

・保険等級に2等級以上の差が生じていない場合

随時改定は、あくまでも給与に対して保険料の額が多すぎたり少なすぎたりして適切ではない場合に行われるものです。それで、標準報酬月額の昇降差が2等級未満の場合は行われません。なお、定時決定の場合にはこの条件もありませんので、たとえ1等級の変更であっても、その時点での給与総額に応じた等級となります。

・支払基礎日数が17日未満の月がある場合

固定的賃金が変動して3カ月の間に、支払基礎日数が17日未満の月が1つでもある場合です。前述の通り、特定適用事業所である医院に勤務する短時間労働者として社会保険に加入している従業員は、11日未満の月が1つでもある場合となります。

・固定的賃金の上下と給与総額の上下が逆方向である場合

また、紛らわしいケースとして、固定的賃金の上下と給与総額の上下が逆方向である場合も、随時改定の対象外となります。

具体例を示して説明します。

基本給月額170,000円、通勤手当10,000円、残業手当20,000円(総額200,000円)の従業員がいると想定します。保険料額表によれば、標準報酬月額は200,000円となります。

この従業員が医院から離れた場所に引っ越して、通勤手当が13,000円になったとします。固定的賃金が上がっています。同時に、業務が少なくなり、残業手当が0円になった場合、どうなるでしょうか。

給与総額は183,000円となり、標準報酬月額は180,000円の等級となります。これは2等級下がったことになります。

固定的賃金が変動したタイミングで標準報酬月額が2等級以上変動しているので、この状態が3カ月間継続した場合、本来であれば随時改定を行うべきです。

ですがこのように、固定的賃金が上がったのに給与総額が下がっている場合は、随時改定を行いません。

先ほどと同じ、基本給月額170,000円、通勤手当10,000円、残業手当20,000円(総額200,000円)の従業員について、別のケースを考えましょう。

この従業員が医院の近くに引っ越して、通勤手当が5,000円になったとします。固定的賃金が下がったことになります。同時に、業務が忙しくなり、残業手当が60,000円になった場合、どうなるでしょうか。

給与総額は235,000円となり、標準報酬月額は240,000円の等級となります。これは2等級上がったことになります。前のケースの逆で、固定的賃金が下がったのに給与総額が上がっています。この場合も、随時改定を行いません。

この2つのケースのように、固定的賃金の上下と給与総額の上下が逆方向である場合は随時改定の対象外となりますので、ご注意ください。

まとめ

随時改定による報酬月額変更届の提出が遅れると、後から差額の精算をしなければいけません。随時改定の条件をよく確認し、適切に処理するようにしてください。

ややこしいお手続きが面倒な方や詳しく知りたい方は、専門家である社会保険労務士へご相談ください。