この記事でわかること

  • 残業時間を判断する基準は医院の所定労働時間ではない
  • 日々の残業時間、休日出勤時間、深夜労働時間は1分単位で集計しなければならない
  • 管理監督者は時間外手当や休日出勤手当を支給されない

絶対に間違えたくない残業代の計算方法

残業代つまり時間外手当は、労働基準法に定められた時間を超える労働に支払われる、割り増しされた賃金のことです。

賃金が割り増しされることにより、医院は人件費削減のため業務を効率化して残業の発生を抑制し、長時間労働や休日出勤、深夜の時間帯に及ぶ労働を削減するよう促されます。また、負担の大きな仕事を果たす従業員に、相応の対価が支払われることになります。

ですが、そもそも残業代を正しく計算していなければ、これらの目的を十分に達成することはできません。

今回は、残業代の計算において注意すべき点をまとめました。

残業の種類

残業は3つの場面で発生します。

法定時間外に働いた場合

1日8時間、週40時間を超えて働くと、残業代が発生します。従業員10人未満のクリニックなどは、週44時間の特例を適用することができます。

残業時間を判断する基準は医院の所定労働時間ではない、という点に注意が必要です。たとえば、所定労働時間が7時間の場合、1時間残業しても8時間に収まっているため、通常の賃金を支払うだけで結構です。

時間外労働の割増率は25%です。

この割増率について、労働基準法第37条第1項は「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と述べています。 

なお、従業員100人以上かつ資本金の総額が5,000万円以上の病院について、1カ月の残業時間が60時間を超過すると、それ以降の割増率は50%となります。

法定休日に働いた場合

労働基準法第35条は「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と述べて、1週間に1日を法定休日とするよう定めています。

就業規則に明示しておくことが望ましいのですが、たいていの医院では日曜日を法定休日にしているでしょう。もし所定休日が2日以上あっても、法定休日は1日だけということに注意してください。たとえば、土日が休みであっても、法定休日は日曜だけとなります。

休日出勤の割増率は35%です。

深夜に働いた場合

労働基準法第37条第4項は「使用者が、午後十時から午前五時まで……の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と述べています。

したがって、労働基準法上の深夜とは午後10時から翌朝5時までであり、この時間帯の労働には25%の割増賃金を支払う必要があります。

 

また、上記の3つの場面が重複するケースがあります。

たとえば、残業が長引いて深夜の時間帯にかかってしまった場合や、日曜の深夜の時間帯に勤務しなければならなくなった場合などです。

この場合は、残業代の計算時にそれぞれの割増率を上乗せすることになります。

時間外労働が深夜の時間帯にかかった場合は25%+25%=50%となり、前述の60時間以上の時間外労働が深夜の時間帯にかかると50%+25%=75%となり、休日出勤が深夜の時間帯に及んだ場合は35%+25%=60%となります。

一方、日曜に出勤したところ仕事が長引き8時間を超過してしまったような場合は、この計算の例外となります。

つまり、休日出勤と時間外労働の割増率は上乗せされません。単純に法定休日の労働として計算されるため、割増率は35%です。

残業代等の計算方法

では、残業代等の算出方法を確認しましょう。

①時間単価を出す

まずは、時間単価を出します。

時間給で働いている場合は、その時間給の金額です。

月給で働いている場合は、月給の金額を1カ月の平均所定時間で割ります。

月ごとに勤務日数が違うと思いますが、1年間の総労働時間を計算して12で割ると1カ月の平均所定時間を算出することができます。


手当を基本給に含めるかどうかも検討します。

通勤手当、家族手当、住宅手当など、労働の対価ではない手当は除きます。資格手当など、基本給の上乗せとみなされるものは含みます

②残業時間を集計する

時間単価が決まったら、残業時間等を集計します。

日々の残業時間、休日出勤時間、深夜労働時間は1分単位で集計します。

そうしなければ未払い残業代となりますので、ご注意ください。

とはいえ、給与明細を確認すると、残業時間等が1分単位ではなく1時間単位で記載されている医院もあります。

これは、1カ月の時間を集計した結果、時間外労働、休日労働、深夜労働のそれぞれの合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げるという取り扱いが認められているからです。計算の過程で切り捨てることはできませんが、計算結果を丸め処理することはできる、ということです。

残業代の支給対象者

管理監督者は支給対象外

時間外労働や休日出勤をした従業員は、それに応じた手当を受給することができます。

ただし、例外があります。

管理監督者は、労働基準法第41条で「労働時間、休憩及び休日に関する規定は……適用しない」と定められています。

そのため、管理監督者は時間外手当や休日出勤手当を支給されません。

管理監督者は出退勤の時刻がある程度自由で、厳密に監視されていません。

一方で、休日でも問い合わせがあれば対応する責任があります。

それなりの地位にある人材であれば、たとえ割増賃金を受給しなくても、補って余りあるほどの十分な待遇を受けています。

病院では院長が管理監督者に相当します。勤務医はほとんどの場合これに該当しないため、残業代等を支給しなければなりません。

管理職は全員「管理監督者」にあたるのか

地位を与えない名ばかり管理職の横行が社会問題となっています。

ですが、管理監督者とは単なる管理職を指すのではありません。

肩書に関係なく、実態として労働時間も報酬もずっと優遇されている人材を指します。これに該当する従業員はほんの一握りであることを忘れないでください。

未払い残業の裁判例

残業代を支払われてこなかった従業員が裁判を起こすことがあります。

たとえば、いわゆる日本マクドナルド事件(東京地方裁判所平成20年1月28日判決)では、会社へ、管理監督者ではないと判断された店長へ時間外手当等を支払うよう命じられました。

管理監督者になるかどうかの判断の基準については、こちらの厚生労働省の資料を参照してください。

なお、管理監督者も深夜業に関する規定は適用されるため、深夜労働に対する手当は支給されます。

2019年4月以降、管理監督者の労働時間を把握することが義務化されました。労務管理を徹底してまいりましょう。

まとめ

従業員の働きに対し残業代等を正しく計算することは、院長の責任です。毎月の時間外労働、休日労働、深夜労働を正確に把握し、従業員の皆さんが気持ちよく働けるよう、職場環境を整えてまいりましょう。

給与計算のミスが発生した場合の対処法はこちらの記事をご覧ください