この記事でわかること

  • 原則として、有給休暇は暦日を単位に付与されるもの
  • 事後申請を認めるのであれば、就業規則へ規定し、従業員へ周知しておくことが適切
  • 有給休暇の事後申請を認めなかった場合には、給与計算上、欠勤扱いとなる

医療職に従事する従業員は女性の割合が多くなっています。

家庭の事情や急な子供の対応など、急に有給休暇を取らなければならない場合も少なくありません。事前に有給休暇を申し出ることを条件づけている医院では、欠勤後に事後的に申請があった場合にどのような対応方法が考えられるのでしょうか。

今回は欠勤後の有給休暇申請にフォーカスをあて解説します。

事後申請の承認は各医院の判断に委ねられる

原則として、有給休暇は暦日を単位に付与されるものです。

暦日とは、本来働くべき日の午前0時からの継続した24時間となります。

よって事後申請の場合、理論上、既に午前0時からの継続した24時間の要件を満たさないことから、適正な有給休暇の付与とはなりません。

医院の場合、他の業種と比べて、看護師など女性の従業員が多くを占め、子供の発熱など突発的な事情により、事後申請がなされることがあり、労務管理上も問題となっています。

就業規則で「年次有給休暇は●日前までに申請すること」などと規定している企業は多いですが、事後申請を認めるか否かは医院の判断に委ねられます。

また、事後申請を認めるのであれば、就業規則へ規定し、従業員へ周知しておくことが適切です。問題となる対応例は、従業員によって認めたり認めなかったりと、対応を変えてしまうことです。

従業員目線では「有給休暇自体は労働者の権利」という部分が先行し、「自分だけ取らせてもらえなかった」などと感情的になりやすく、トラブルが発生してしまう可能性があります。

また、有給休暇の事後申請を認めなかった場合には、給与計算上、欠勤となります。

時給での労働契約締結者であれば、単に働いていない時間の賃金が支払われないだけですが、月給での労働契約を締結している場合、通常支払われている分の基本給から欠勤控除をかけることとなりますので、人事部門と労務部門で担当者が異なっている場合は連携が必須となります。

万が一、給与額の間違いが生じた場合、翌月の給与で調整するなど、労使双方にとって気持ちの良いこととは言えませんので、注意が必要です。

有給休暇の申請のタイミング

法律上、事後申請を認めなければならない根拠はありません。

しかし、取得予定日からあまりにも早いタイミングでの申出を義務付けることは現実的ではありません。

理論上は、前日までであれば法律上の要件を満たすこととなりますが、医療という業態を鑑みると3日前や当日に突然有給休暇を申請されても代替要員を確保できないない場合もあるでしょう。

よって、医院内の状況を総合的に勘案してそれぞれの医院での申請期限を決定すべきです。

また、変形労働時間制のシフトを組んでおり、代替要員の確保が困難な場合も予想されることから、前提として、仮に3日前と決定していたとしても、早めの申し出を周知しておくことが適切です。

具体的な事後申請の事例

(1)交通機関の遅延による事後申請

電車やバスなどの公共交通機関が天災や人身事故などの理由により始業開始時刻に間に合わない場合や、そのまま出勤ができないといった場合が想定されます。

仮に遅刻して業務を開始した場合、公共交通機関から発行される「遅延証明書」の提出を条件として、有給休暇の事後申請を認めるという対応方法があります。

しかし、同じ遅延であっても、車出勤の場合は外部要因である交通事故渋滞で遅刻したにも関わらず、公共交通機関で発行される遅延証明書は発行されません。よって、車通勤の場合は事後申請が認められない可能性が有り得るという話になります。

その場合、従業員の証言を信用し、証明がなくても認めることとし、通勤方法の相違によることのみの不均衡を解消するという対応方法が挙げられます。

また、前述のような交通遅延は恒常的に起こるものとは言い難く、有給休暇とは別の特別休暇として処理するという対応方法もあります。

有給休暇の残日数が減らないことから従業員側にはメリットとなりますが、医院側としてはその管理に一定の時間がとられるというデメリットがあります。

(2)有給休暇時季指定後の事後変更

2019年4月1日付改正労働基準法により、年10日以上、有給休暇が付与される労働者に対して、付与された日から1年の間に5日の付与が義務付けられています。そこで、医院から時季指定した後に、従業員側の都合で事後的に変更をした場合の取り扱いを確認しましょう。

医院が指定した時期について、意見聴取の手続きを再度行い、その意見を尊重することによって変更することは可能です。

尚、医院が指定した時季について、労働者が変更することはできませんが、医院が指定した後に労働者に変更の希望があれば、医院は再度意見を聴取し、その意見を尊重することが望ましいとされています。

まとめ

有給休暇の事後申請は、認めること自体は問題ありませんが、恒常的に発生しているということは、そもそもの労働契約内容に無理が生じている場合や、健康面など、他の部分に問題がある場合も想定されます。事後申請は必ずしも外的な要因(例えば交通遅延)だけが原因とは言えませんので、頻発する場合は面談機会の設定などの対応が適切です。

参考:

厚生労働省 東京労働局「通勤災害について」

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html