この記事でわかること

  • 法定休暇は、従業員からの請求があった場合は、必ず取得させなければならない
  • 就業規則に所定休日として定められていなくても、医院が勝手に有給休暇として処理をすることは禁止されている
  • 計画的付与を行うためには、就業規則へ労使協定の合意で可能とすることを記載する必要がある

年末年始やお盆の時期は、休診になる医院も多いでしょう。

医院が休診であれば従業員も休暇になることがほとんどかと思われます。 

しかし、2019年4月から、全ての使用者に対して『年5日の年次有給休暇の確実な取得』が義務付けられているため、従業員が有給休暇を取れないほど忙しい医院では、「この時期の休暇を年次有給休暇として消化させたい」という質問をいただくことがあります。

 もちろん、医院が勝手に年次有給休暇として処理をすれば、従業員も不満を抱くでしょう。

 また、年次有給休暇として処理ができるかどうかは、年末年始やお盆の休暇が就業規則にどのように定められているかによっても変わってきます。

年末年始やお盆の休暇を年次有給休暇として処理することは法的に問題ないかどうかについて、状況ごとに見ていきます。

年末年始やお盆の時期の休暇が所定休日と定められていた場合

休日とは、労働契約上で従業員が労働義務を負わない日のことをいいます。

労働基準法35条では、毎週少なくとも1日は休日を与えるよう義務付けています。

また、例外として4週を通じて4日以上の休日を与える変形休日制も認めています。

これらの労働基準法で定義された休日のことを「法定休日」といい、それ以外の企業などが就業規則によって定めた休日のことを「所定休日」といいます。 

医院の年末年始やお盆の時期の休暇が、就業規則により所定休日と定められていた場合は、従業員が労働義務を負わない日になります。

そのため、所定休日と定められていた年末年始やお盆の時期の休暇を、有給休暇として処理することは、そもそもおかしいということになるのです。

年末年始やお盆の時期の休暇が法定外休暇と定められていた場合

休暇とは、労働義務がある日に労働義務を免除する日のことをいいます。 

即ち、本来は働かなければいけない日に、従業員からの請求により休んでもよい日になります。 

休暇にも、労働基準法などの法的に定められた「法定休暇」と、企業などにより独自に就業規則に定めた「法定外休暇」とがあるのです。

法廷休暇

該当するもの:年次有給休暇、産前産後休暇、育児休暇、介護休暇など

法定休暇は、従業員からの請求があった場合は、必ず取得させなければなりません。

法定外休暇

該当するもの:夏季休暇、年末年始休暇、リフレッシュ休暇、慶弔休暇、特別休暇など

法定外休暇のような独自の休暇を定める場合には、必ず就業規則に記載しておく必要があります。

但し、法定外休暇は、無くても問題はありません。

就業規則により法定外休暇と定められていた年末年始やお盆の時期の休暇を、有給休暇として処理するためには、就業規則を変更する必要があります。

しかし、このような法定外休暇の廃止は、従業員にとって就業規則の不利益変更に当たりますので、慎重に進めなければいけません。

なぜなら、不利益を受けた従業員が、慰謝料や労働条件の変更を求めて、提訴するリスクがあるからです。

そのため、法定外休暇と定められていた年末年始やお盆の時期の休暇を、有給休暇として処理することは難しいということになります。

年末年始やお盆の時期の休暇が就業規則に定められていない場合

年末年始やお盆の時期の休暇が就業規則に定められていなければ、その日は労働義務がある日になります。

そのため、従業員が年末年始やお盆の時期の休暇を取得するためには、年次有給休暇として取得することになります。

しかし、決まった年末年始やお盆の時期を、医院が一方的に従業員の年次有給休暇として処理させることはできるのでしょうか?

まずは、年次有給休暇とは、どういうものかについて見ていきます。

年次有給休暇とは、労働基準法第39条に規定されていて、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことです。 

従業員にとっては、取得しても賃金が減額されなく有給で休むことができます。

年次有給休暇は、雇い入れの日から6か月継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した従業員に与えなければならないとされています。

年次有給休暇の付与日数は、雇い入れの日から起算した勤続期間により変わってきます。 

また、パートタイム労働者などの所定労働日数が少ない従業員についても付与されますが、一般の従業員よりも日数は少なく比例的に付与されるのです。

年次有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えなければならないと労働基準法で定められています。

そのため、就業規則に年末年始やお盆の時期の休暇が定められていなかったとしても、医院が勝手に有給休暇として処理をすることは禁止されています。

年次有給休暇の計画的付与

このように見ていくと、年末年始やお盆の時期の休暇を年次有給休暇として処理をする方法は無いように思えます。 

しかし、年次有給休暇には、労働基準法39条6項に定義されている計画的付与という制度があります。 

計画的付与は、年次有給休暇のうちの5日を超える部分について、あらかじめ付与日を決めて取得させることができる制度です。

計画的付与制度で取得した年次有給休暇も5日取得義務化の5日としてカウントされます。

【例】年次有給休暇が10日付与されたAさんに計画的付与を行う

⇒年次有給休暇のうちの5日を超える部分なので、付与日として使えるのは5日間分のみ

この制度は、年次有給休暇の取得率が上がっていかないことが背景に設けられた制度で、導入することにより労働環境の向上が期待できます。

計画的付与を導入することで、従業員側は年次有給休暇を取得しやすくなるメリットがあり、また医院側も計画的に医院の運営をできるようになります。

この制度を利用すれば、年末年始やお盆の時期の休暇を、年次有給休暇として処理をすることは可能です。

但し、年次有給休暇の計画的付与を行うためには、事前に様々な準備が必要になります。 

まずは、就業規則に計画的付与を行うためには、労使協定の合意で可能とすることを記載する必要があります。

そして、実際に計画的付与を行う場合には、就業規則の定めにより、従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を行います。

なお、この労使協定は、労働基準監督署に届け出をする必要はありません。

まとめ

このように、年末年始やお盆の休暇を年次有給休暇として処理するためには、年次有給休暇の計画的付与により行うしかありません。

 但し、計画的付与を行うためには、就業規則への記載と書面による労使協定が必要なため、ハードルは決して低くありません。

 年末年始やお盆の休暇を年次有給休暇として処理したい場合には、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。