この記事でわかること

  • 口頭で退職の意向を伝えて退職すること可能だが、トラブルの原因となる可能性があるので「退職届」は作成してもらう
  • 退職金を支払う場合、「退職所得の受給に関する申告書」を記入してもらい、医院で保管する必要がある
  • 「給与所得の源泉徴収票」は渡し忘れるケースが非常に多い

従業員が退社した際に行わなければいけない手続き

従業員から退職の意向が伝えられることがあります。

大事な人材ですから、院長の立場としては引き止めたいと思うかもしれません。しかし、家庭の事情がある、または転職先が決まっているなどの理由で、退職の決定を変更できないこともあります。そうであれば、スムーズな円満退職を目指し、後任への引き継ぎなどの段取りを始めましょう。

加えて、社会保険や労働保険の手続きも必要になります。退職が決まった後、どのような手続きをすればよいかをまとめました。

退職届の重要性について

まず、従業員から退職の意向が伝えられたなら、退職願を作成してもらいましょう。

退職願について、法律上はどのように定められているでしょうか。

民法第627条1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています。この申入れについては、書面でも口頭でもよいと解釈されています。つまり、口頭で退職の意向を伝えて退職することも認められています。ですが、口頭でのやり取りでは、トラブルの原因となりかねません。

たとえば、従業員が後から「自分は解雇された」などと労働基準監督所に相談するというケースがないわけではありません。このような事態を未然に防ぐため、退職願を書面で作成していただくようにしてください。

従業員から回収するもの

医院が従業員に渡したもので、従業員から回収しなければならないものがいくつかあります。まず、健康保険証です。

医院の健康保険に加入していないパート・アルバイトを除き、必ず回収する必要があります。

医院から従業員に貸与しているものがあればこちらも回収してください。

これには、医院の制服や名札などのほか、医院が貸与していた筆記用具なども含まれます。従業員が、私物と混同していたり、もらったものだと思い込んでいたりして、トラブルになるケースもあります。これらを回収するのは最後の勤務が終了してからになるので、リストを作成するなどして、漏れのないように回収しましょう。

また、退職金を支払う場合、「退職所得の受給に関する申告書」を従業員に記入してもらい、医院で保管してください。

退職の手続き方法

次に、医院が行う手続きを確認します。退職日の後、どのような手続きが必要でしょうか。いくつかの場合に分けて考えてみましょう。

①厚生年金に加入している場合

厚生年金に加入している場合、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出します。提出先は、医院の所在地を管轄している年金事務所です。原則として退職日の翌日から5日以内に提出してください。

なお、協会けんぽに加入している場合、前述の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出することで協会けんぽの資格喪失手続きも処理されることになりますので、別途提出する必要はありません。

②医師国民健康保険組合に加入している場合

医師国民健康保険組合に加入している場合、国民健康保険被保険者資格喪失届 (従業員組合員用) を提出します。提出先は、加入している組合の窓口です。提出期限は組合によって指定されていますので、ご確認ください。

③雇用保険に加入している場合

雇用保険に加入している場合、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。提出先は医院の所在地を管轄しているハローワークです。原則として退職日から10日以内に提出してください。ただし、59歳未満の従業員が離職票の交付を希望しない場合、「雇用保険被保険者離職証明書」の提出は不要です。これは、転職先がすでに決まっているので雇用保険 (基本手当) を受給しないことがはっきりしている、などの場合です。

59歳以上の従業員には、その希望にかかわらず、医院は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」の両方を提出します。

④住民税を給与天引きしていた場合

住民税を給与天引きしていた場合、「給与所得者異動届」を提出します。提出先は住民税の納付先、つまり退職者の住所がある市区町村です。退職のタイミングなどにより記入の仕方が異なるため、窓口や市区町村のホームページで確認しましょう。原則として退職日を含む月の翌月10日までに提出してください。

退職者に渡さなければならないもの

最後に、退職日の後で退職者に渡すものをまとめます。

まず、「給与所得の源泉徴収票」です。これは最後の給与計算が終わった後、給与明細に同封して一緒に渡すことができるでしょう。全員に渡すことが必要ですが、渡し忘れるケースが非常に多いので、気を付けましょう。

また、「雇用保険被保険者離職票」も渡します。この書類は、退職者が雇用保険の基本手当を受給するための手続きに必要です。ハローワークは、離職票を速やかに発行してくれますので、すぐに退職者にお渡しするようにいたしましょう。ただし、前述の通り離職票の発行を希望しない59歳未満の退職者に対しては、お渡しする必要はありません。

まとめ

従業員の退職手続きは行うべきことが多く、間違えるとトラブルの元になります。社会保険労務士に任せることによって、院長がご自身で手続きをする手間を減らし、本来の業務に集中することができます。どうぞお気軽にご相談ください。