この記事でわかること

  • 不当な圧力を加えたり、不当に侮辱するなどの強引な退職勧奨を行った場合には、違法になる
  • 明確な拒否があった場合は、退職勧奨を中止する
  • どうしても辞めさせたければ正当性があるか慎重に判断して、解雇を行う

一歩間違えば法律違反になり兼ねない退職勧奨

経営不振などにより、医院にとって人員を削減しなければならない状況があるかもしれません。 

そのような時には、従業員の解雇も考えられますが、強引な解雇は大きなトラブルに繋がります。そのため、 従業員の意思により退職をすることを促す退職勧奨という方法を取る会社も少なくありません。

但し、退職勧奨は、気を付けて進めていかなければ、違法になる可能性もあります。

医院が退職勧奨をせざるを得なくなった場合に、どのように行えば従業員と円満に進められるのかや、何を注意すればよいのかについて見ていきます。

退職勧奨とは?

退職勧奨とは、使用者が従業員に対して、自主退職や、労働契約の合意解約の承諾を促すことです。

あくまでも従業員の意思による退職を促すための説得活動であり、解雇のような法的な規定があるわけではありません。

退職勧奨により退職することは従業員の意思であるため、医院が従業員に対して退職勧奨を行っても違法ではありません。

反対に退職勧奨をされた従業員にとっては、 退職勧奨に必ずしも従う必要はないのです。

退職勧奨と解雇の違い

医院にとって人員を削減しなければならない場合に考えられる方法は、解雇と退職勧奨です。

解雇とは、従業員に対して一方的に労働契約の解約を言い渡すことです。

解雇の場合は従業員の意思に伴わないため、解雇を言い渡された従業員は、基本的には退職するしかありません。

このように、解雇には使用者の強力な効力が認められますが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効とされます。

一方、退職勧奨は、従業員に対して自主的に退職するようにお願いすることです。

そのため、退職するかどうかはあくまでも従業員の意思が重要なので、強要すると違法になる可能性があり、医院がリスクを負うことになります。

また、退職勧奨による退職は、雇用保険上の扱いでは会社都合の退職と同様の扱いになります。

違法になる退職勧奨とは

退職勧奨は従業員の意思により退職をすることを促す行為のため、法的な規定はありません。 

但し、従業員に対して不当な圧力を加えたり、不当に侮辱するなどの強引な退職勧奨を行った場合には、違法になる可能性があります。

・退職勧奨に応じない場合に、不利益な扱いをする

例えば、「退職勧奨に応じなければ解雇」という発言により従業員が退職した場合、従業員の本意からの退職ではないため違法の可能性があります。

また、退職勧奨に応じなければ減給や配置転換になるという発言も、客観的かつ合理的な理由がない場合は違法と判断されることも考えられます。

・退職勧奨の説得が何時間にも及ぶ

退職勧奨を拒否しているにもかかわらず、長時間の説得が続く場合も、退職強要として違法になる可能性があります。

・退職勧奨が何人もの上司に囲まれて行なわれている

このケースはパワハラによる退職強要と判断され、違法になる可能性があります。

・所定労働時間外にも退職勧奨が続く

退職勧奨自体は違法ではありませんが、所定労働時間内に行うべきです。

所定労働時間外まで退職勧奨が続く場合は、違法になることも考えられます。

・拒否の意思表示をしているのに退職勧奨が何度も繰り返される

退職勧奨を拒否しても、何度もしつこく退職を促したりするケースがありますが、このケースも退職強要として違法になる可能性があります。

・追い出し部屋 

追い出し部屋とは、辞めてほしい社員に対して圧力をかけるために、自主的な退職に追いこむために設けられた部署や施設のことをいいます。

このような圧力も、違法と判断されることが考えられます。

・不要な配置転換

退職を目的とした配置転換は、嫌がらせ目的と捉えられる可能性があります。

退職勧奨が不法行為にあたると判断された例

厚生労働省のハラスメント対策情報サイト「明るい職場応援団」では、東京高裁平成24年11月29日判決の日本航空事件を、退職勧奨が不法行為に当たる例として挙げています。 

▷参考ページリンク:https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/13

この事件は、成績が低迷していたため退職勧奨を受けていた原告が、自主退職はしない意思を示した後も、上司が以下の表現などで退職を求めたものです。

「いつまでしがみつくつもりなのか」

「辞めていただくのが筋」

「懲戒免職とかになったほうがいいのか」

しかも退職を求める面談は、長時間に及んだため、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱している違法な退職勧奨と判断されました。

他にも以下のような表現が、違法な退職勧奨と認定されました。 

「1年を過ぎてもOJTと同じようなレベルしか仕事ができない人に会社チャンス与えられない」

「もう十分見極めた」

「懲戒になると会社辞めさせられたことになるのを嫌がっている」

「記憶障害であるとか、若年性認知症みたいな」

この事案の判決は、違法な退職勧奨の慰謝料として原告側が500万円を請求していたところ、一審、本判決ともに20万円が妥当と判示されました。

では、残業代等の算出方法を確認しましょう。

退職勧奨の注意点

人員を削減するために、退職勧奨を行う場合は以下のことに注意して行う必要があります。

・不法行為に当たるようなハラスメント行為をしない

・従業員が退職に応じるメリットを提示すること

このように、十分に注意をして退職勧奨を行っても、明確な拒否があった場合は、退職勧奨を中止した方がよいでしょう。

どうしても辞めさせたければ正当性があるか慎重に判断して、解雇を行うことも一つの手段です。

まとめ

従業員に対して退職勧奨や解雇を行うことは、難しい判断や説得が必要です。

退職勧奨や解雇を進めていきたい事案については、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。