この記事でわかること

  • 試用期間中であっても自由に解雇ができるわけではない
  • 試用期間中に解雇を行う場合は、試用開始から解雇までの日数によって手続きが異なる
  • 妊娠や産休・育休を理由とした不利益な取り扱いは法律で禁止されている

試用期間の労務管理で押さえるべきポイントとは

面接等を経て新たな人材を迎え入れるにあたり、直ちに「本採用」には踏み切れないという医療機関は少なくありません。

特に、近年はコロナ禍の影響でWEB面接も多く採用されており、面接担当者のこれまでの経験則が働かないという声も多く挙げられます。そのような場合に「試用期間」を設けて、従業員としての適性を判断するという労務管理手法を採用する医療機関が多く見られます。

今回は試用期間の法的性質等について解説してまいります。

試用期間の法的性質とは

まず、試用期間とは法的には「解約権留保付労働契約」と解釈されています。

解約権留保付労働契約

試用期間中の従業員に対して正社員として本採用できない場合に労働契約を解約する権利を認めている契約のこと。

しかし、既に労働契約が締結している点では本採用後と変わりはありませんので、試用期間中であるからと言って、一方的かつ無制限に解雇ができるというわけではありません。

試用期間中の解雇

繰り返しになりますが、試用期間中であっても自由に解雇ができるわけではありません。

解雇をするにあたっては、原則として30日前に予告をしなければなりません。

また、30日前に予告できない場合は「解雇予告手当」を支払うことでその日数を短縮することができます。

解雇予告手当

法定の解雇予告期間を短縮した支払われる手当。

解雇予告を行わない場合:30日分以上の平均賃金を支払う必要がある。

予告の日数が30日に満たない場合:不足日数分の平均賃金を支払う必要がある。

試用期間中に解雇を行う場合は、試用開始から解雇までの日数によって手続きが異なります。

試用開始から14日を過ぎて解雇する場合は解雇予告が必要です。

反対に14日以内であれば解雇予告は不要と解されています。

しかし、よほどの問題社員(例えば患者へ暴言をはく)を除き、これまで面識のない従業員をそもそも14日以内で本当に不適格と判断できるのかという従業員側の反論は想定されます。

また、解雇の事実を相手に伝える方法は法律上定めがなく、口頭でも可能とされていますが、前提として就業規則に規定を設けておく必要があります。

ですが、規程があるからと言って100%解雇が認められるということではありません。

労働契約法第16条で『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。』と定められています。

そもそも規程内容が社会通念上の相当性を逸脱する内容である場合、万が一社内での紛争が司法の場に移った際に、解雇は権利濫用として無効扱いされるリスクがあるということです。

不当解雇になり得るケースや事例

業務とは無関係の私生活上のトラブル

例えばデスクワークが主たる業務の事務員がプライベートで起こした交通事故等が挙げられます。行為自体は決して褒められる行為ではありませんが、明らかに業務とは無関係であり、かつ、初犯であった場合で、他の従業員を指導するような立場にない従業員という立場であれば、解雇処分は社会通念上相当とはいえず、明らかに重すぎます。

もちろん、医療機関専属のバス運転手が飲酒運転で事故を起こした場合などは、解雇処分が社会通念上相当であるとみなされる場合があるため、話は変わってきます。

妊娠や産休、育休を契機とした実質的解雇

育児介護休業法第10条に規程があるように、妊娠や産休・育休を理由とした不利益な取り扱いは法律で禁止されています。

(不利益取扱いの禁止)

育児介護休業法第10条

事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

事例としては妊娠が判明し、産休終了後に育児休業を申し出たことを理由として、申し出た従業員に対して解雇その他不利益な取扱いをした事例です。

明記されている「解雇」が問題であることは言うまでもありませんが、複数回にわたり、退職をちらつかせるような発言をし、実質的に解雇と変わらない対応であっても当然問題で違法な労務管理となります。

③改善の機会が与えられていない解雇

優秀な従業員であっても長期間勤務するにあたってどこかでミスは出てくるものです。

問題となりやすいのは、相対的に評価が低い従業員について解雇事由に当たり得るような事実が露見した場合(例えば著しい成績不良)です。

たとえ、評価が低い従業員であっても、改善の機会を与えずに解雇することはリスクが高いと言えます。

特にパワハラを受けていたことにより精神面に支障をきたし、そのことに起因しての成績不良の場合、医療機関としての責任が問われます。

試用期間の代替選択肢

試用期間を設けることにリスクがあると判断し、「有期雇用契約」を締結するという選択肢を採用する医療機関があります。

メリットとしては、試用期間終了時の労働契約の解約よりトラブルが起きにくいという点が挙げられます。有期雇用契約においては、引き続き雇用関係を更新しない限り、「期間満了」を持って労働契約は終了となります。

ただし、過去に反復更新されていないことや、有期雇用契約者に対して更新を期待させるような発言や対応がなされていないことが前提条件となります。

デメリットとしては、雇用の安定性がないため、求人において正社員よりも有能な人材が集まりにくいという点があります。もちろん、有能な人材が家庭の都合で正社員のような長い労働時間では働けず、短時間勤務が可能な有期労働契約を希望するケースもあるため、一概には判断できません。

まとめ

試用期間終了後の解雇は本採用後の解雇と比べると緩やかであると解されますが、労働契約を締結している点では何ら変わりませんので、万が一解雇を検討せざるを得ない場合には専門家へ相談するなど、慎重な対応が求められます。

人事労務に関するお悩みやご相談がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。