この記事でわかること

  • 労働基準監督署の調査とは、医院の働き方が労働基準法に抵触しているかどうかを調査するもの
  • 調査の拒否や虚偽内容を伝えた場合は、30万円以下の罰金に処せられることもある
  • 是正勧告を受け、指定期日までに是正報告書を提出しなかった場合は再監督が入ることもある

労働基準監督署の調査とは、労働時間や労働条件などが労働基準法に抵触しているかどうかを確認するためのものです。

調査の対象となるのは、全ての業種や企業であり、もちろん医院も含まれます。

医院に勤務する医師や従業員の働き方については、以前から様々な問題があるため、近頃では医院に対する調査が頻繁に行われています。

医院に調査が入った場合、どのような流れで行われ、どのような対応を行えばよいのかについて見ていきます。

労働基準監督署の調査の種類

労働基準監督署の調査は、労働基準法に抵触しているかどうかを調査するものですが、目的や状況などにより以下の4種類に分かれます。

(1)定期監督

定期監督とは、最も一般的な調査であり、当該年度の監督計画に基づいて労働基準監督署が予定を組んで、定期的に実施している調査です。

調査内容は、労働基準法の法令全般に渡っての調査になります。

原則としては、調査対象となる会社を無作為に選んで予告なしで調査に来ますが、場合によっては調査日程を事前に連絡してから来ることもあります。

(2)申告監督

申告監督とは、従業員からの申告(告訴や告発)があった場合に、その申告内容について確認するための調査です。

申告監督は、従業員を保護するために、従業員からの申告であることを明らかにせず、あくまでも定期監督のように行う方法があります。

 若しくは、従業員からの申告であることを明らかにして、呼出状にて呼出して調査を行う方法があります。

何れにせよ、申告監督は申告のあった内容を確認することが目的であり、労働基準監督署が申告した従業員の氏名を言うことはありません。

(3)災害時監督

災害時監督とは、一定規模以上の労働災害が発生した場合に、原因究明や再発防止の指導を行うための調査です。

(4)再監督

再監督とは、労基法調査により労働基準監督署から是正勧告を受けた場合に、勧告を受けた違反が是正されたかを確認するための調査です。

また、再監督は、是正勧告を受けたにもかかわらず、指定期日までに是正報告書を提出しなかった場合にも行われます。

調査の流れ

労働基準監督署の調査は、以下の流れで行われます。

①予告の有無

調査は、予告なしの抜き打ち調査が適しています。

なぜなら、事前に予告することにより、労働環境の実態を確認できなくなる可能性があるからです。

そのため、原則、 予告なしの抜き打ち調査なのですが、実際は予告してから調査に入るケースが多いようです。

予告してから調査に入るケースでは、事前に電話やFAXなどで、調査予定日や用意をしておく帳簿や書類などを連絡してから調査に入ります。

また、現地調査を行う必要はないと労働基準監督署が判断した場合には、「出頭要求書」が届きます。

出頭要求書が届いた場合は、必要書類を労働基準監督署に持参して、軽い質疑応答のみで調査を終えることができます。

予告なしの抜き打ち調査だった場合に、調査を拒否したり、虚偽内容を伝えた場合には、労働基準法第120条により30万円以下の罰金に処せられることもありますので、注意が必要です。

②調査

調査の方法は労働基準監督署の監督官によっても違いますし、医院の状況によっても変わってきますが、概ね以下の調査が行われます。

  • 労働関係の帳簿を確認する。
  • 院長または責任者へヒアリングを行う。
  • 医院内の立ち入り調査および従業員へのヒアリングを行う。
  • 口頭での改善指示又は指導を行う。

③是正勧告の指導

調査の結果、労働基準法の法令違反が見つかった場合は、違反事項と是正期限を定めた「是正勧告書」が交付されることになります。また、法令違反まではいかなくても、改善すべき点が認められた場合は、「指導票」が交付されます。 

さらに、医院の施設や設備に不備があり、従業員の安全を害するような危険が認められる場合には、「使用停止等命令書」が交付される可能性があります。

是正勧告書や指導票を交付された場合、期日までに「是正(改善)報告書」を提出しなければなりませんので注意が必要です。

④罰則等

調査により重大、悪質な労働基準法の法令違反が確認された場合や、是正勧告などに医院が従わない重大、悪質な場合については、労働基準監督署は司法警察権限を行使して捜査を行います。

その結果、書類送検、企業名公表、起訴、罰則、逮捕などに発展することもあります。

調査が入った場合のリスク

医院に調査が入っても、労働基準法の法令違反などが無ければ基本的には問題はありません。

但し、法令違反があった場合や、違反がなくても以下のようなリスクも考えられます。

・未払い賃金などがあれば支払いが発生する

・法令違反などで弁護士依頼をすれば弁護士報酬の支払いが発生する

・労働基準法違反などにより医院名が公表される

・労働基準法違反などにより罰金の支払いが発生する 

・逮捕やネガティブな口コミの投稿

・労働基準監督署や従業員対応に関する時間消費

・従業員が離職する

・求職者数が減少する

・医院名の公表などを受けたり、有能な従業員が退職した場合、患者数が減少する

・虚偽の陳述を行った場合の罰金

調査で確認されるポイントと主な書類

調査では労働基準法の法令違反がないかどうかを、以下のポイントで確認を行います。

また、調査に必要な書類は以下になります。

(1)賃金関係に対する違反がないかの調査

未払い残業がないか、最低賃金をクリアしているかなどの調査を行うために、以下の書類を確認します。

  • 賃金台帳 
  • 出勤簿 
  • 雇用契約書 
  • 就業規則

(2)従業員の勤怠関係に関する違反がないかの調査

端数処理をしていないか、36協定を超えた残業などがないかの調査を行うために、以下の書類を確認します。

  • 出勤簿
  • タイムカード
  • 社員別の時間外労働や休日労働に関する実績がわかる資料

(3)その他の調査

就業規則の有無、有給の取得率、健康診断の受診など、その他の労働基準法違反がないかの調査を行うために、以下の書類を確認します。

  • 就業規則 
  • 雇用契約書
  • 医院の組織図
  • 労働者名簿 
  • 時間外/休日労働に関する協定届
  • 変形労働時間制など、特殊な定めをしている場合の労使協定
  • 有給管理簿
  • 健康診断の控え
  • 変形労働時間のシフト票
  • 総括安全衛生管理者の選任状況のわかる資料
  • 安全委員会、衛生委員会の設置・運営状況についての資料

まとめ

このように、労働基準監督署の調査が入った場合に労働基準法の法令違反があれば、業務の是正をしたり、提出書類の準備をしなければなりません。

また、調査が入っていなくても、 調査が入ることを見越して、様々な準備が必要です。

労働基準監督署の調査の対応を考えている場合は、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。