この記事でわかること

  • 募集広告と異なる労働条件での採用は、従業員との合意があれば可能
  • 労働条件に変更があった場合は、速やかに応募者に知らせなければならない
  • 労働条件を変更する場合の明示は、変更前と後の内容を比較できる書面の交付が望ましい

従業員を募集する場合には、ハローワークへ求人申込みを行ったり、ホームページで募集を行うなどの方法があります。

このような募集広告に掲載する労働条件の明示内容については、職業安定法により規定されています。

この募集広告に掲載された募集内容と、異なる労働条件で採用することはできるのでしょうか?

職業安定法で規定された募集広告に掲載する労働条件の明示内容の詳細や、募集広告と異なる労働条件で採用した場合にどうなるのかについて見ていきます。

従業員との労働条件の合意

ハローワークやホームページなどの募集広告に掲載された労働条件が、そのまま労働契約の内容になるとは限りません。

医院側にとっては、応募者それぞれのスキルや状況により、採用条件が求人情報の労働条件と変わることも考えられます。

また、応募者側にとっても、募集広告に掲載された労働条件通りに働けない場合もあります。

そのため、募集広告に掲載された労働条件がそのまま労働契約になるわけではなく、労働契約書などに記載された労働条件を応募者が合意した場合に初めて契約が成立します。

即ち、募集広告に掲載された労働条件と異なる労働条件で採用するには、従業員との合意があれば可能なのです。

但し、虚偽の募集広告については、職業安定法第65条第8号によって、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に規定されています。

募集広告における労働条件の明示義務について

職業安定法では、従業員の募集、求人などには、少なくとも以下の労働条件を書面にて明示しなければならないと規定されています。 

但し、応募者が希望する場合には、電子メールによる労働条件の明示も可能です。

・業務内容 

・契約期間

・試用期間の有無及び内容

・就業場所

・就業時間

・休憩時間

・休日

・時間外労働

・賃金

・社会・労働保険の加入の状況

・募集主・求人者の氏名又は名称

・派遣労働者として雇用しようとする場合はその旨

また、労働条件について、以下を明確化する必要があります。

・労働時間に関し、裁量労働制が適用される場合はその旨を明示すること。

・賃金に関し、固定残業代を採用する場合には、固定残業代についての事項を明示すること

労働条件を明示するに当たって遵守すべき事項

労働条件を明示する場合には、以下の職業安定法に基づく指針等を遵守しなければなりません。

・明示する労働条件は、虚偽又は誇大な内容であってはならないこと

・有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示すること

・試用期間と本採用が一つの労働契約である場合、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合には、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示すること

・労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定すること

・労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示すること

・労働条件が変更される可能性がある場合はその旨を明示し、実際に変更された場合は速やかに知らせること

労働条件に変更があった場合の明示義務

職業安定法では、当初明示した労働条件が変更される場合には、変更内容について明示しなければならないとされています。

面接などの過程において、労働条件に変更があった場合は、速やかに応募者に知らせなければなりません。

以下のような場合には、変更内容についての明示が必要となります。

・当初の明示と異なる内容の労働条件を提示する場合

・当初の明示の範囲内で特定された労働条件を提示する場合

・当初の明示で明示していた労働条件を削除する場合

・当初の明示で明示していなかった労働条件を新たに提示する場合

労働条件を変更する場合の明示は、応募者が変更内容を適切に理解できるような方法で行う必要があります。そのため、当初の明示内容と、変更された後の内容を比べることができる書面を交付する方法が望ましいです。

但し、労働条件通知書において、変更された事項に下線を引いたり、着色したり、脚注を付ける方法により適切に明示することも可能です。

労働契約締結時の労働条件の通知

労働条件通知書とは、労働契約を締結する際に、医院から従業員に対して労働条件を通知するための書類であり、労働基準法により作成を義務付けられている書類です。

労働条件通知書により労働条件を通知した後に、労働契約書を締結します。

労働契約書は、従業員を雇い入れる際に医院と従業員の間で交わされる、労働条件についての取り決めが記載されている書類です。

一般的には2部作成されて、医院と従業員がそれぞれ署名捺印して、1部ずつ保管します。

労働契約書の作成は義務でないため、労働条件通知書を労働契約書の代わりとする場合もあります。

但し、募集内容の異なる条件で採用する場合は、後々の揉め事を回避するためにも、労働契約書を締結した方がよいでしょう。

まとめ

このように、従業員の募集や求人を行う時の募集広告には、労働条件の明示が必要です。

また、労働条件を変更する時には、変更内容の明示、さらに、労働契約を締結する際には、労働条件の通知が必要になります。

明示や通知をする労働条件の内容は決められていますので、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。

参考:

厚生労働省_労働者を募集する企業の皆様へ

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171017_1.pdf