この記事でわかること

  • 従業員が取得した中抜け時間を一方的に時間単位の有給扱いにすることはできない
  • タイムカードなど、目に見える形で勤務時間を管理する必要がある
  • あらかじめ統一的な対応を設定し、周知することが重要

中抜けは労務管理上どういう取扱いになるのか?

労働時間には必ず始業時刻と終業時刻が定められており、所定の時間内は労働契約に従って、労働の提供をしなければなりません。

しかし、様々な働き方が尊重され始めている現代において、一時的に就業場所を離れる「中抜け」についても対応方法を検討する必要性が高まっています。

中抜けとは

中抜け

所定労働時間の途中に医療機関の指揮命令下から外れ、再び労働に戻るまでの時間を指します。(【例】一時的に自宅に戻り、再度職場に戻って働く)

労働時間とは医院の指揮命令下にあることを指し、その時間帯は当初労働契約で定めた労務の提供が求められます。

ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、中抜け時間に対してはその時間帯に時間単位の有給休暇を請求された場合を除き賃金支払い義務は生じません。

ノーワーク・ノーペイの原則
従業員が労務を提供していない場合、その部分についての賃金を支払う義務はないという、給与計算の基本原則。

また、賃金計算の便宜上、時間単位の有給休暇の申請があった方が、欠勤控除の計算が発生しないという医院側のメリットはあるものの、一方的に時間単位の有給休暇を付与することはできませんので注意が必要です。

勤怠管理上の注意点として、客観的な手法での管理が求められるため、タイムカードや勤怠システムなどの目に見える形で、勤怠時間を管理する必要があります。

賃金支払い対象となる労働時間や、法律で定められた休憩時間の管理はもちろんのこと、賃金計算で控除する根拠として、中抜け時間の管理も必須となります。

次に医療機関で多く採用されている1か月変形労働時間制の場合についても確認します。

1か月変形労働時間制
1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えないこと等の要件を満たす場合、特定の日に1日8時間超の労働時間を設定しても割増賃金が発生しない制度。

労働基準法で定められている基本的な法定労働時間は、原則1日8時間・1週間40時間です。10人未満のクリニックなど特定の事業場については、1週44時間とすることも認められています。
特定の曜日や特定の季節など、仕事が忙しくなるタイミングがあらかじめ分かっている場合、一定期間の労働時間の合計は変えないまま、忙しい時は長く働き、そうでない時は就業時間を短縮したり休日にしたりするよう事前にシフトを組むことができるのが変形労働時間制です。

1か月変形労働時間制を採用している場合、前提条件として、変形期間の各日・各週の具体的な労働時間を定めておく必要があります。
中抜けを認めるか否か決めること自体はできますが、この前提条件は欠かすことができませんので、注意が必要です。

就業規則を締結するときのポイント

①中抜け時間は賃金支払い対象でない旨を明記しておく

現在の働き方の変化等を総合的に勘案し、医療機関として中抜けを認める場合、中抜け時間は確認的な意味合いで賃金支払い対象でない旨を明記しておくことが重要です。

②就業規則の周知の徹底

就業規則が整備されている医院の場合、就業規則の内容が周知されていることが前提ではありますが、従業員の各作業場から就業規則が見られる状態になっているかを確認しておくことが必要です。

中抜け時間の外出を制限することは可能?

休憩時間の前提条件として、労働基準法34条第3項に定められている「自由利用」の原則が挙げられます。

「自由利用」の原則とは、休憩時間は労働からの解放が保障された時間の為、警察官など一定の職種を除き、自由に利用させる必要があることを指します。

しかし、職場秩序維持の観点から一定の規律保持上の制限を加えることは休憩の目的を損なわない限り差し支えないとされています。

また、休憩時間中の外出について、所属長の許可を受けさせることは必ずしも違法ではありません。

しかし、自由に休憩ができない場合や一方的な外出禁止は、よほど特殊な事情がない限り、自由利用の原則を損なう可能性が高く、困難と言えます。

午前診療・午後診療に分けていない医院であれば、施設内に患者様が在院されていることから、交代で休憩に入ることが一般的です。

三密回避の観点からも、従業員全員を休憩室にて休憩を命じるという判断は適切とは言い難く、感染防止対策を徹底させたのちに分散休憩(職場内と外での休憩)を推進するなどの判断も想定されています。

自由利用の原則とは、あくまで休憩を目的とする行為に限って自由な利用が認められているに過ぎません。

極端な例ですが、従業員による医療機関内でのビラ配布など、施設を利用した私的行為を代表の許可制にすることは、施設管理権の合理的な行使として認められる範囲内である場合、合理的な制約であると解釈されます。

まとめ

医療業界は女性の多い業界と言われています。中抜け時間は、特に子育てをしながら働く従業員が取得の多い傾向にあり、保育所からの呼び出しや子どもの急な体調不良に対応する措置として扱われています。

従業員によって対応方法を変えていると、信頼関係に亀裂が生じることがあるため、あらかじめ統一的な対応方法を定め、周知しておくことが重要です。