この記事でわかること

  • みなし残業制度は、毎月一定時間の残業を行っているとみなし、固定の残業代を支払う制度
  • トラブルの原因になるため、制度導入する場合には、雇用契約書の再締結を行った方がよい
  • 労働基準法に定められた各都道府県ごとの最低賃金を下回ってはならない

従業員が、毎月一定時間の残業を行っているとみなし、固定分の残業代を支払う賃金制度のことを「みなし残業(固定残業代)制度」といいます。

みなし残業制度を導入することは、本来医院にとっても従業員にとっても大きなメリットがあります。

しかし、みなし残業制度を正しく運用しなければ、デメリットになるばかりか、違法になるケースも考えられるのです。 

みなし残業制度を導入するにあたっての手続き方法や、ポイント、注意点などについて見ていきます。

みなし残業制度の仕組み

上記で述べた通り、みなし残業制度とは、従業員が毎月一定時間の残業を行っているとみなし、固定分の残業代を支払う賃金制度のことです。

例えば、みなし残業制度により、医院の毎月時間外労働が20時間とみなされていた場合、実際の月の残業時間が15時間だったとしても、20時間分の固定残業代を支払う必要があります。

同じケースで、実際の残業時間が20時間を超えていた場合は、超過分の残業代について別途支払わなければなりません。

決して、20時間分の固定残業代を支払えばそれで済むということではありませんので、注意が必要です。

みなし残業制度の導入方法

みなし残業制度を導入するには、以下の手順を行う必要があります

・固定残業代の算出を行う

みなし残業制度を導入するためには、みなし残業を何時間に設定して、固定残業代はいくらになるかなど、計算となる基準を決める必要があります。

固定残業代の算出は従業員個別の計算となるため、間違えると大きなトラブルに繋がる可能性があります。

そのため、十分に注意をして算出する必要があります。

基本給に組み込まない場合の固定残業代は、以下の順序にて算出します。

(1)年間の所定労働日数を12で割り、月の平均所定労働日数を算出する。

(2)給与総額を月の平均所定労働日数で割り、さらに1日の所定労働時間数で割ることにより1時間あたりの賃金額を算出する。

(3)1時間あたりの賃金額に割増率を掛けて、固定残業代の時間数を掛けることにより固定残業代を算出する。

・従業員への通知、同意

みなし残業制度を導入することは、従業員にとって大切な賃金に関する変更になるため、口頭で説明するだけでは足りません。

みなし残業制度の導入を就業規則に明記して、対象の従業員全員にきちんと通知する必要があります。

制度を導入するにあたって、基本給に固定残業代を上乗せして支払う場合には、従業員の同意は必要ありません。

但し、基本給の中に固定残業代を含めるように変更する場合には、従業員に対する不利益変更になるため、従業員の同意が必要になります。

・就業規則への反映

みなし残業制度を導入することが決まったら、基本給の金額がいくらで、固定残業代がいくらなのかを明確に区別できるように就業規則に記載する必要があります。
また、固定残業代が、何時間分の残業代を補完しているかを明示する必要もあります。
但し、就業規則に記載するだけでなく、変更点を従業員に説明して周知をする必要もあります。

・雇用契約書の再締結

雇用契約は、契約書がなくても契約の意思の合致があれば成立します。

しかし、雇用契約書がなければ契約内容が不明確であるため、トラブルの原因になることが多いです。
特に、労働条件の内容についてはトラブルに発展することが多いため、みなし残業制度を導入する場合には、雇用契約書の再締結を行った方がよいでしょう。
雇用契約書を締結して、医院と従業員の双方で保管を行うことにより、トラブルが生じた場合でも、みなし残業制度に合意したことの証明をすることができます。

みなし残業を導入する際は、正しい法知識が必要となります。

クラシコメディカルでは医療業界の働き方に精通した社会保険労務士がサポートいたします。

みなし残業制度を導入する際のポイント

みなし残業制度を導入するにあたってのポイントについて見ていきます。

・従業員による書面での確認
みなし残業制度を導入することにより、給与の額や手当について、従業員一人一人の支給額が異なります。
そのため、その内容は書面で合意を交わしておくと、後々のトラブルが避けられます。
給与辞令や労働契約書を締結すれば、労使間で合意を得ることができたということになりますので、できるだけエビデンスを残すことが重要です。

・就業規則で明確化する
導入に際して、みなし残業制度の概要や適用方法は就業規則で明確化し、所轄の労働基準監督署へ届け出しなければなりません。
就業規則に記載した内容は、従業員への説明を行い、周知することも必要です。
さらに、トラブルを回避するためにも、就業規則を確認したことについて、従業員と書面等で確認しておくとなおよいでしょう。

・最低賃金を下回らない
固定残業代を設定する時に、労働基準法に定められた各都道府県ごとの最低賃金を下回ってはいけません。
各都道府県ごとの最低賃金を下回った場合には、違法になりますので注意が必要です。

・労働基準法の残業時間を超えないこと

労働基準法に定められた残業時間は、1か月最大45時間のため、みなし残業制度で設定する残業時間も1か月45時間を超えてはいけません。
36協定を結んでいる場合であっても、原則1か月45時間を超えてはいけませんので注意が必要です。

みなし残業制度を導入するにあたっての注意点

みなし残業制度を導入する場合には、以下の点についての注意が必要です。

・未払い残業代が発生しないように注意すること
従業員の実労働時間が、みなし残業制度で設定した時間よりも超過分がある場合は、超過分の割増賃金を別途支給しなければなりません。
 この超過分の割増賃金を支払わなかった場合は、未払い残業代になりますので注意が必要です。

・深夜残業、休日残業は固定残業代に含まれない
深夜残業や休日残業については、みなし残業制度で設定した固定残業代とは別に支払う必要があります。

・みなし残業制度の内容についての明確化
後々のトラブルを回避するためにも、就業規則、雇用契約書、給与明細には、みなし残業制度について明確にわかるような表記をする必要があります。

・不利益変更になる場合の従業員との同意
みなし残業制度を導入するにあたり、基本給部分を減額するなど、従業員にとって不利益な変更となる場合には、従業員と個別に同意を得る必要があります。

まとめ

このように、みなし残業制度を導入するには、後々の従業員とのトラブルや、法的な違反にならないように注意をしなければなりません。

医院でみなし残業制度を導入しようと考えている場合には、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。

参考:

厚生労働省 「公正な採用選考のために」

https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-hellowork/content/contents/000644439.pdf