この記事でわかること
- 応募者本人に責任のない事項を採用基準にすると就職差別に繋がる可能
- 思想や信条など本来自由である事項を採用基準にすると就職差別に繋がる可能性がある
- 男女どちらかのみの返答を採用の判断材料とすることは、男女雇用機会均等法違反になる
就職することは、生活の安定を図るためにも、人生の生きがいを見つけるためにもとても重要なことです。
そのため、採用選考は、常に公正なものでなければいけません。
しかし、現実では人権問題を無視して、採用には関係のない本籍地や家族の職業などの本人に責任のない事項や、思想信条などの本来自由であるべき事項を採用基準としている企業もあります。
従業員を採用する場合に、就職差別につながるなどの聞いてはいけない質問について詳しく見ていきます。
本人に責任のない事項
従業員を採用する場合のエントリーシートに記載させることや、面接で尋ねることや、作文を課すなどで聞いてはいけない就職差別の中に、応募者本人に責任のない事項があります。
以下の事項は、応募者本人にはどうにもできないことであり、仕事をする上で何も関係ありません。
そのため、就職差別に繋がる恐れがありますので、注意が必要です。
①本籍
職務を遂行する上で、本籍はまったく関係ありません。
また、応募者本人の仕事への適正や能力や意欲とは全く関係なく、就職差別と判断される可能性もあります。
② 生い立ち
生まれ育ったところはどこなのかや、両親の出身地はどこなのかの質問も、職務を遂行する上での応募者本人の仕事への適正や能力や意欲とは全く関係のないものです。
③家族関係
家族の続柄や家族構成について聞いたり、家庭環境や家族との関係がうまくいっているかを聞いたりすることも、職務を遂行する上では全く関係のないものです。
家族が円満かどうかなどは主観的に判断されるものであり、家族関係が採用原因となることは、就職差別になる可能性があります。
④家族の学歴、職業、地位、収入
家族の学歴や職業や地位収入がどうかなどは、応募者本人の仕事への適正や能力や意欲とは全く関係ありません。面接官を行う方は、ついうっかり不適切な質問をしないように注意が必要です。
⑤家の資産
家の資産の調査は、採用後に医院に損害を与えた場合の保証能力の有無や、生活レベルを把握するために行われることなのかもしれません。
しかし、家の資産の大小が、応募者本人の仕事への適正や能力や意欲とは全く関係なく、結果として貧しい家庭の応募者を排除することになれば、就職差別になります。
⑥住居とその環境
住居の場所や住居環境については、採用後に把握すればよいことであり、採用前に質問することではありません。また、住居の間取り、部屋数、坪数、畳数、住宅の種類などは、適正や能力や意欲とは全く関係ありません。
住居とその環境については、採用後に必要なことだけ把握するようにしましょう。
本来自由であるべき事項
本来自由であるべき項目とは、思想や信条など、私生活で自由であるべき事項です。
以下の事項は、職務を遂行するために必要な適正と能力とは全く関係のないものです。
職務を遂行するために必要な適正と能力を基準に採用を行わなければ、就職差別に繋がる可能性があります。
(1)思想、生活信条、宗教
思想、信条、宗教、人生観などは、信教の自由や思想および良心の自由などの日本国憲法に基本的人権として保障されている自由権に含まれるものです。
このような本来自由であるべき事項について、採用面接などで質問することは不適切であり、就職差別に繋がる可能性があります。
(2)支持政党、加入団体
支持政党や加入団体も、日本国憲法で保障されている自由権に含まれるものであり、これを採用の場に持ち込むことは、基本的人権を侵すものになります。
そのため、支持政党、加入団体に対して質問することも、就職差別に繋がる可能性があります。
(3)尊敬する人物
尊敬する人物も、自由権に含まれるものであり日本国憲法で保障されているものです。
そのため、採用の場に持ち込むことは、就職差別に繋がる可能性があります。
(4)労働組合、学生運動など社会運動に関すること
労働組合、学生運動などの社会運動に関わることも、本来自由であるべき事項です。
これを、採用の場に持ち込むと、就職差別に繋がる可能性がありますので、聞いてはいけません。
(5)購読新聞、雑誌、愛読書などに関すること
購読新聞、雑誌、愛読書なども、本来自由であるべき事項であり、適正や能力とは全く関係のないものです。
(6)女性に限定した質問
交際相手の有無を質問することは、プライバシーの侵害になり、場合によってはセクハラと捉えられる恐れがあります。
また、結婚、出産しても働き続けられるかや、結婚する予定はあるのかや、何歳まで働けるのかなどの女性に限定した質問をした場合は、男女雇用機会均等法違反になりますので、不適切な質問です。
仮に、男女に同じ質問をしたとしても、男女どちらかのみの返答を採用や不採用の判断材料とすることも、男女雇用機会均等法違反になります。
やってはいけない採用選考方法
公正な採用選考のために、以下の選考方法はやってはいけません。
- 家庭訪問などの身元調査などの実施
- 新規高卒者応募時の全国高等学校統一応募用紙以外の使用。
- JIS規格の履歴書(様式例)に基づかない「適性と能力に関係のない事項」を含んだ応募書類(社用紙)の使用
- 合理的、客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
まとめ
このように、採用選考は、常に公正なものでなければいけません。
そのため、採用面接で聞いてはいけないことについて、理解しておく必要があります。
従業員を採用する場合の聞いてはいけないことについては、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。
参考:
厚生労働省 「公正な採用選考のために」
https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-hellowork/content/contents/000644439.pdf