この記事でわかること

  • 年末調整の概要と提出書類の種類
  • 自院が主たる給与の支払い者の場合は、通常通り年末調整を行う
  • 従たる給与の支払い者の場合は、源泉徴収票を発行して渡す
  • 掛け持ちをしている従業員は原則として確定申告が必要となる

パートを掛け持ちをしている従業員の年末調整

昨今、働き方改革の一環として、副業や兼業といったダブルワークに注目が集まっています。
従来は職務専念義務の一環として、副業・兼業を就業規則で禁止している企業が圧倒的に多かったのです働き方改革や昨今の景気の悪化により、パートを掛け持ちで働いている従業員が増えています。もちろん医療機関も例外ではありません。今回は、2カ所以上の事業所で掛け持ちで働いている従業員の年末調整について簡単に解説します。

年末調整の概要と提出書類の種類

年末調整とは

給与の支払を受ける人の一人一人について、毎月(毎日)の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額(年税額)とを比べて、その過不足額を精算する手続です*1。

いわば給与の源泉徴収の総決算ともいうべきものであり、大部分の給与所得者は、この「年末調整」によってその年の所得税及び復興特別所得税の納税が完了します。

全員が提出する書類は以下のとおりです。

①扶養控除等(異動)申告書
年末調整を行うために、必ず必要となる書類。

扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除の計算に使います。

扶養控除申告書は基本的には一箇所の勤務先にしか提出できませんので、掛け持ちをしている従業員には他の事業所に提出していないかを確認しましょう。

②給与所得者の基礎控除申告書(基礎控除申告書)
基礎控除とは、所得者の合計所得金額が2,500万円以下である場合に、その所得者本人の所得金額の合計額から48万円を限度として、所得者の合計所得金額に応じた金額を控除するものです。

該当者は基礎控除申告書の提出が必要となります。

③配偶者控除等申告書
配偶者控除とは、所得者(合計所得金額が1,000万円以下の人に限る)が控除対象配偶者を有する場合に、その所得者本人の所得金額の合計額から38万円(配偶者が老人控除対象配偶者の場合は48万円)を限度として、所得者の合計所得金額に応じた金額を控除するものです。

配偶者の合計所得金額が48万円を超えるときは、配偶者控除の適用は受けられません。

配偶者控除の適用が受けられない場合でも、配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下なら配偶特別控除の適用が受けられます。

④所得金額調整控除申告書
所得金額調整控除とは、所得者(その年の給与の収入金額が850万円を超える人に限る)が、特別障害者に該当する場合又は年齢23歳未満の扶養親族、特別障害者である同一生計配偶者 若しくは特別障害者である扶養親族を有する場合に、その所得者本人の給与所得の金額から15万円を限度として、給与の収入金額(その給与の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円) から850万円を控除した金額の100分の10に相当する金額を給与所得の金額から控除するものです。

⑤保険料控除申告書
生命保険料や地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金など控除の対象となる保険料がある方のみ提出が必要です。

⑥(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
いわゆる住宅ローン控除のための書類です。住宅ローン控除が申告できるのは、合計所得金額が3000万円以下の場合です。

自院が主たる給与の支払い者の場合は、年末調整を行う

自院の手続きは、従業員にとって自院が主たる勤務先となるかどうかによって異なります。

一般的には、勤務時間が長く給料の多い会社の給料を「主たる給与」と考えます。

自院が主たる勤務先となる場合は、通常通り年末調整を行います。

自院が従たる給与の支払い者の場合は、源泉徴収票を発行して渡す

もし自院が従たる事業所であれば、原則として年末調整できません*2。

したがって、源泉徴収票を発行して従業員に渡すだけで構いません。

従業員は、その源泉徴収票をもとに自ら確定申告を行います。

「給与所得の源泉徴収票」は厚生労働省のホームページからをダウンロードすることができます。

掛け持ちをしている従業員は確定申告が必要となる

掛け持ちをしている従業員は、一部の例外を除いて確定申告を行う必要があります
具体的にいうと、「2か所以上から給与を受け、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、年末調整を受けた主たる給与以外の従たる給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人*1_71p」は確定申告をしなければなりません。

ただし2か所以上から給与を受ける給与所得者であっても、その給与収入の合計額から各種控除の額を差し引いた金額が150万円以下である人で、さらに、給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下の人は、確定申告をする必要はありません。

まとめ

まずは従業員本人に、自院が支払う給与が主たる給与になるか、従たる給与になるかを確認することが必要です。扶養控除等(異動)申告書は、本来はその年の最初に給与の支払を受ける日の前日(中途就職の場合には、就職後最初の給与の支払を受ける日の前日)までに提出する必要がありますので、入職時、もしくは副業の申し出があったときに忘れずに確認しておきましょう。

掛け持ちで働いている従業員についての疑問がありましたら、お気軽にご相談ください。

参考:

*1 国税庁 令和3年分年末調整のしかた
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2021/pdf/nencho_all.pdf
*2 国税庁 No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm