この記事でわかること
- 育児休業を取得しやすくするために、整備等を行う必要がある
- 雇用期間が1年未満の有期雇用労働者も、無期雇用労働者と同様の取得要件になる
- 育児休業とは別に取得可能な「産後パパ育休」が令和4年10月1日から創設される
目次
2022年4月から段階的に施行される育児・介護休業法の改正
令和3年6月に公布された改正育児・介護休業法が、令和4年4月1日から段階的に施行されます。
改正の根拠となる法案は、「育児休業、介護休業等又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案(令和3年法律第58号)」です。
改正内容のポイントは、男性の育児休業取得促進や、育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務化などになります。
今回の改正育児・介護休業法の詳細と、段階的施行の時期等について見ていきます。
育児・介護休業法とは?
育児・介護休業法は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。
一定要件を満たした正社員、契約社員、パート・アルバイトなどの働いている人が、育児や介護との両立ができるように支援するための法律です。
育児・介護休業法には、育児のために取得できる「育児休業制度」や、家族の介護のために取得できる「介護休業制度」などの、様々な両立支援制度が定義されています。
育児・介護休業法の改正内容
令和4年4月1日から段階的に施行される育児・介護休業法の改正の目的は、出産や育児などによる従業員の退職を防ぎ、男女ともに仕事と育児の両立ができるように育児休業を取得しやすくすることです。
具体的な改正内容は、以下の5項目になります。
①育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(令和4年4月1日施行)
〇育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置
育児休業を取得しやすくするために、以下の整備等を行う必要があります。
- 育児休業に関する研修の実施
- 育児休業相談窓口設置などの相談体制の整備
- 従業員の育児休業取得事例の収集や提供
- 育児休業取得促進に関する方針の周知
〇妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置を講ずることを事業主に義務付ける。
妊娠や出産等を申し出た従業員に対して、育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認が義務付けられます。周知と意向確認の方法は、面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかで行う必要があります。
- 育児休業に関する制度
- 育児休業の申し出先
- 育児休業給付に関すること
- 労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月1日施行)
現行の有期雇用労働者の育児休業の取得要件は、以下2つです。
ア.当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
イ.その養育する子が1歳6か月に達するまでに、その労働契約が満了することが明らかではないこと
上記のうち、アの要件を廃止して、イだけが育児休業の取得要件となります。
即ち、引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用労働者についても、無期雇用労働者と同様の取得要件になるということです。
但し、労使協定を締結した場合には、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である従業員を対象から除外することができます。
このように、今回の育児・介護休業法の改正により、引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用の従業員については、法律上で育児休業の取得ができなかったのが、労使協定による除外の対象に変更されます。
厚生労働省は、改正法施行前後の労使協定の取扱いについては、改めて労使協定を締結する必要があると回答していますので、上記のケースでは再度労使協定を締結し直す必要があります。
③男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(令和4年10月1日施行)
男性の育児休業取得促進のため、育児休業とは別に取得可能な「産後パパ育休」が令和4年10月1日から創設されます。
産後パパ育休の概要は、以下になります。
- 対象期間、取得可能日数
子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
- 申出期限
原則休業の2週間前まで(雇用環境の整備等、今回の改正で義務付けられる内容を上回る取り組みを労使協定で定めていれば1か月前までとすることができる)
- 分割取得
分割して2回取得可能(初めに纏めて申し出ることが必要)
- 休業中の就業
労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能
④育児休業の分割取得(令和4年10月1日施行)
育児休業について、分割して2回まで取得することができるようになります。
⑤育児休業の取得の状況の公表の義務付け(令和5年4月1日施行)
常時雇用する従業員数が1,000人超の企業等は、育児休業の取得状況について年1回公表することが義務付けされます。
改正前・改正後の育児休業の比較
以下は改正前と改正後の育児休業の比較です。
- 対象期間、取得可能日数
原則、子が1歳(最長2歳)まで取得可能は、改正後も変わりません。
- 申出期限
原則1か月前までは、改正後も変わりません。
- 分割取得
改正前:原則分割不可
改正後:分割して2回取得可能(取得の際にそれぞれ申し出ることが必要)
- 休業中の就業
原則就業不可は、改正後も変わりません。
- 1歳以降の延長
改正後:育休開始日を柔軟化
改正前:育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定
- 1歳以降の再取得
改正前:再取得不可
改正後:特別な事情がある場合に限り再取得可能
まとめ
このように、改正育児・介護休業法が、令和4年4月1日から段階的に施行されます。
就業規則(育児・介護休業規程等)の変更が必要な改正もあるので、今後の詳細な情報を確認して対応を進めましょう。
改正で変更になる従業員の育児休業についての疑問等については、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問い合わせください。
参考:
厚生労働省「育児休業、介護休業等又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案(令和3年法律第58号、令和3年6月9日公布)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000788616.pdf
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」