この記事でわかること

  • 原則として副業は可(職業選択の自由)
  • 就業規則に禁止事項があれば副業不可とすることも可能。
  • 正当な理由がない場合は副業禁止が認められない。
  • 従業員が黙って副業した場合、就業規則に違反していると懲戒処分が可能な場合もある。

医療職の従業員の副業はどう定められているのか。

昨今、働き方改革の一環として、副業や兼業といったダブルワークに注目が集まっています。
従来は職務専念義務の一環として、副業・兼業を就業規則で禁止している企業が圧倒的に多かったのですが、厚生労働省は副業・兼業を積極的に進めようとしています。
今回は、そもそもクリニックで働く従業員のダブルワークは認められるのか、そして認める場合の注意点を解説します。

副業は法律上認められている

結論から言うと、従業員が就業時間以外にダブルワークをすることは、原則として認められています

これは勤務先が医療機関であっても変わりはありません。

なぜなら、日本国憲法は職業選択の自由を保証しているからです。副業・兼業に関する裁判例を見ても、労働者が定められた労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされています*1。

したがって、現在副業・兼業を就業規則で一律に禁止している場合、又は副業・兼業を全て一律に許可制としている場合には、就業規則の見直しが必要となります。

就業規則に禁止事項があれば副業不可とすることも可

原則的には副業が認められると言いましたが、例外的に副業が認められないケースもあります。

就業規則や労働契約で副業・兼業の禁止が明記されているケースです。

昔はこのタイプの契約がメインでしたが、現在は原則として副業・兼業を認める方向で世の中が動いていることもあり、労働契約書に副業禁止を明記することは少なくなってきました。

正当な理由がない場合は副業禁止が認められない場合もある

就業規則を作成したからといって、一律に副業・兼業を禁止するのは難しいです。

従業員の副業を阻止しようと厳格な就業規則を作成して、裁判で無効とされた判例もあります。就業規則の内容の見直しには、社会保険労務士といったプロの視点が必要となります。

ちなみに企業側が副業・兼業を禁止・制限できる正当な理由としては、以下のようなものがあります*2。

  • 労務提供上の支障がある場合(職務専念義務違反)
  • 企業秘密が漏洩する場合(秘密保持義務違反)
  • 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為(信用確保義務違反)
  • 競業により、会社の利益を害する場合(競業禁止義務違反)

副業・兼業可とする場合の就業規則の条文例

厚生労働省の副業・兼業に関するガイドラインでは「副業・兼業を禁止している企業や一律許可制にしている企業は、まずは、原則副業・兼業を認める方向で就業規則などの見直しを行い、労働者が副業・兼業を行える環境を整備しましょう。」とはっきり記載されています*1_4p

「原則、副業・兼業を認める方向で」とはいっても、副業に熱を入れすぎて自院の業務に支障が出たり、長時間労働で体調を崩すようなことがあっては困ります。
また、医療機関は極めてデリケートな個人情報を扱う職場であり、患者さんの情報を含めた企業秘密の漏洩の危険性がある場合は対策をとる必要があります。

このような場合は、就業規則において副業・兼業を原則可とした上で、禁止・制限する条件をあらかじめ盛り込んでおくと良いでしょう。

例:

(遵守事項)
第11条 労働者は、以下の事項を守らなければならない。
① 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。
② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈与を受ける等不正な行為を
行わないこと。
③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。
④ 会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。
⑤ 在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。
⑥ 許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。
⑦ 酒気を帯びて就業しないこと。
⑧ その他労働者としてふさわしくない行為をしないこと。
(懲戒の事由)
第62条 労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。
①~⑥ (略)
⑦ 第11条、第13条、第14条に違反したとき。
⑧ (略)
2 (略)

参考資料:モデル就業規則の改定案(副業・兼業部分) – 厚生労働省

就業規則のモデルは厚生労働省から提示されておりますので、副業・兼業の項目について自院の就業規則と比べてみてください。

従業員が秘密裏に副業していることが発覚した時の対応

従業員が届出をせずに黙って副業をしていることも、よくある話の一つです。

住民税の請求などの税務処理から発覚することもありますし、他の従業員からの密告で分かったと言うケースも多いです。もしも無許可での副業が発覚した場合は、副業・建業に関する規定が就業規則にあるかどうかで対応が異なります。

就業規則に規定があり、それに違反していた場合は懲戒処分が可能な場合もあります。

厚生労働省がモデルとして出している就業規則では、上に挙げた義務違反などの場合に懲戒を行うことができる規定を設けています。

逆に言うと、副業・兼業を禁止・制限する就業規則がなければ罰則を課すこともできません

適切な就業規則を作成しておくことが極めて重要なポイントとなります。

まとめ

従業員の副業・兼業を認めるのは、もはや世間の要請と言って差し支えありません。

従業員が他の職場を経験し自院に経験を還元してくれるのは、他の従業員にプラスになることでもあります。自院の運営に支障が出ないようにするには、就業規則にて副業・兼業の許可条件を定め、副業・兼業を届出制にするのが最も良い方法です。

就業規則の見直しをお考えの方は、是非一度、プロである社会保険労務士にお気軽にお問合せください。

参考:

*1厚生労働省 副業・兼業の促進に関する ガイドライン わかりやすい解説
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000695150.pdf

*2厚生労働省 モデル就業規則の改定案(副業・兼業部分)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000188623.pdf