この記事でわかること

  • 従業員が遅刻した場合、一般的に就業規則を基準にして判断する
  • 法的に払う義務はないが、払ってはいけないという根拠もない
  • 控除する場合、遅刻した時間に相当する金額だけを1分単位で控除しなければならない

電車が遅延した場合、賃金は全額支給すべきか

従業員の遅刻には、やむを得ない事情があることもあれば、本人に責められる点があり言い訳ができない状況もあるでしょう。理由は様々ですから、それぞれのケースに合わせて対応することになります。

どのようにペナルティを課すか、そして遅刻した分の給与をどうするかを決める必要があります。

一般的に、遅刻した時間分の給与は支払うべきではないと考えると思います。

従業員自身も、自分に遅刻の責任がある場合には、給与を請求することはないはずです。

ですが、自然災害の発生や公共交通機関のトラブルなど、従業員に責任がない事情により遅刻となった場合はいかがでしょうか。

今回は、電車通勤している従業員が電車の遅延により遅刻し、遅延証明書を受け取った場合を考えます。

従業員が遅刻したときの対応方法は就業規則を基準として判断する

従業員が遅刻した場合、どのように対処するかは、一般的に就業規則を基準にして判断します。

①遅刻によって働いていない時間分の賃金を控除する場合

たとえば、就業規則に「欠勤、遅刻、早退、私用外出については、基本給から当該日数または時間分の賃金を控除する」と定められているとします。

その場合、遅刻により業務に従事できなかった時間分の賃金を控除することになるでしょう。

別の方法として、遅刻の場合は、勤務時間がその日の所定労働時間に達するまで、終業時刻を遅らせて勤務するよう定める会社もあります。

ただ、医院の場合は診療時間が決まっていますので、このような取り扱いは難しいかもしれません。

②正当な理由のある遅刻は定時出社として扱う場合

一方で、正当な理由がある遅刻に対しては、定時に出社したものとして扱う会社が多いようです。

その場合、就業規則には「公共交通機関の遅れによりやむを得ず遅刻し、遅延証明書を提出した場合、遅刻の取り扱いとしない」などと定めます。

遅延証明書は電車が遅れた日付、時間帯、遅延時間を記載したもので、駅員が配っているものを受け取ったり、駅の改札窓口で受け取ったり、鉄道会社のホームページから印刷したりすることで入手できます。

●遅刻を制裁の対象とする場合

なお、会社によっては遅刻早退控除とは別に、遅刻を制裁の対象とする会社もあります。

この場合、給与を控除されるだけでなく、ペナルティが課されることになります。

ただし、労働基準法第91条に「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と定められている通り、ペナルティとして規定できる金額については上限があります。

このように、遅刻した従業員については、それぞれの医院の就業規則に従って判断し、取り扱うことになります。

ノーワークノーペイの原則

では、法律上はどのように決められているのでしょうか。

まず、労働契約法第6条には、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と定められています。

労働に対して賃金を支払うということですので、医院は労働していない時間分の給与を支払う必要はないということになります。

また、民法第624条1項には、「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」と定められています。従業員は、労働していない時間についての給与を医院に求めることはできません。

このように、勤務していない時間に相当する給与を支払わなければならない、という法的な根拠はありません

これを、ノーワークノーペイの原則といいます。

もちろん、前述のように「公共交通機関の遅れによりやむを得ず遅刻し、遅延証明書を提出した場合、遅刻の取り扱いとしない」などと医院の就業規則に定められている場合、その規定に従って必ず支給しなければなりません。

したがって、もしノーワークノーペイの原則に従うのであれば、「遅延証明書を提出した場合であっても、就労しなかった時間については賃金を控除する」などと就業規則に明記しておくことにより、トラブルを避けるようにしてください。

法的に払う義務はありませんが、払ってはいけない根拠もありません。

医院ごとに考慮し、事前に就業規則に定めておくことをお勧めします。

遅刻早退控除に関する給与計算上の注意

公共交通機関の遅れによるやむを得ない遅刻に対しても遅刻早退控除する場合、給与計算で注意しなければならないことがあります。

それは、遅刻した時間に相当する金額だけを控除しなければならないということです。

具体的に言えば、15分間や30分単位の控除ではなく、1分単位で処理してください。

多めに控除した場合、違法となってしまいます。

端数が出た場合は切り捨て、遅刻した時間以上の金額を控除しないよう注意してください。

まとめ

公共交通機関の遅延や自然災害の発生など、やむを得ない理由による遅刻の取り扱いには悩まされます。

ノーワークノーペイの原則からすれば遅刻した時間分の給与を支払う必要はありませんが、実際にはあまり厳格にすることなく、遅延証明書があれば出勤したものとしている医院が多いようです。

なお、遅刻早退控除をするかどうかは別にして、多少の電車のトラブルには対応できるよう日頃から余裕を持って出勤するよう従業員を指導することもできるかもしれません。

いずれにしても、このように法律で決まっていないケースについては、就業規則にどのように定められているかが判断基準になります。

この点を曖昧にせず明確に定めておくことが、トラブルの防止につながります。

就業規則の作成についてはプロである社会保険労務士にご相談ください。